広田ゆうみの舞台袖から_1回目

俳優をしております。
と言うとよく訊かれるのが、「テレビに出てますか」ということなのですが、あいにくそういう俳優ではないのでがっかりされたりします(ごめんなさい)。

なので、必要な場合は舞台俳優と名乗るようにしております。少なくとも私はですが、映像で何かをという思いも技術もなく、ただ舞台に立つことを願い、生業としております。

「俳優になりたい」と思ったこともありません。ただ演劇作品をつくりたいと思い、そうしているだけなのですが、それでも「なぜ俳優になったのか」と訊かれるたびに、うまく答えられないままに思い出される、ひとつの春があります。

中学生の頃、演劇部で新入生歓迎公演をしていたときのことです。
出番が終わって退場し、ふと足を向けた舞台の下は、半地下の倉庫でした。



パイプ椅子やモップなどが雑然と並び薄暗く湿ったその奥に、明り取りの窓があり、学校のそばを流れる川が見えました。

その土手道を、乳母車を押した母親がゆっくりと歩いていました。

白い陽光を浴びて、彼女は歩いてゆく。

頭上では、私たちの舞台が続いている。

彼女は私たちを知らず、私たちは彼女を知らない。


──そのとき、続ける、ということを私はぼんやりと思ったような気がするのです。
なぜかはわかりません。ただ、その光景は今もはっきりと覚えています。

そして今、私は「俳優」として、舞台に立ち続けています。
その頃思った姿がどうであったのかわかりませんが、こうなるしかなかったのだろうなあとも思います。なんというか、所謂「芝居」「演技」のイメージとも少し異なるかもしれません。表情豊かでもありませんし(恥ずかしながらウィンクもできない)、美麗な台詞回しもいたしませんし(音痴です)、個性派というやつでもありませんし(よく「友達のいとこに似ている」とか言われます)、別人に「なりきる」わけでもありません(何人たりとも決して自分から逃れることはできない)。

ただ、ひとがそこにいることそのもので、みえないものをみえるようにする。
舞台に立つとは、そういうことだと私は思っております。

また、春が来ます。

相も変わらず、4月の公演に向けて稽古しております。そんな舞台の四方山話をゆるゆるしていけたらと思います。できれば、その頃の自分にも。

photo:misa https://www.instagram.com/0917_misa/



■広田ゆうみ+二口大学  別役実 作「受付」

日時:4月19日(火)19:30(開場は1時間前)

料金:2,000円+1drink料金 2,000円(前売・当日共/+1drinkご注文お願いします)

ご予約:

http://urbanguild.net/events/

(UrBANGUILDイベント「受付」掲載ページより予約可能)

または

hirotafutakuchi@gmail.com


http://hirotafutakuchi.blog.jp

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