坂東さん
こんにちは、京都を拠点に活動しているグラフィックデザイナーの坂東進亮(bando design office)と申します。 昨年4月にスタートした「ロゴの分解」連載も、今回で記念すべき5回目です!!
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<経歴>2011年から約8年間、東京の企業にてデザイナーとして勤務2018年末に退職し2019年より独立しフリーランス として活動現在、フリーランスとして3年目を迎えるこれまでに新規設立に伴う企業様のロゴマークデザイン、ロゴリニューアル、飲食店のロゴマークデザインなどを手がける<活動領域>・ロゴマークを中心としたCI(コーポレートアイデンティティ)/VI(ビジュアルアイデンティティ)・名刺、封筒、レターヘッドなど、企業様に必要な各種ツールデザイン・ブランディング
この「ロゴの分解」コラムでは、私自身がデザインしたロゴマークを題材に、どのような論理的根拠のもとにデザインしているのか、デザインに対するアプローチの裏側を紹介させていただきます。
私自身のデザインに対する姿勢を見ていただければ嬉しいですし、また少しでもデザインの面白さ、奥深さを感じていただければ幸いです。
今回紹介させていただくのは、今年1月にデザインさせていただいた株式会社サガレイ様のロゴマークデザイン。
ご依頼内容は、「現在使っているロゴマークをキレイにデータ化したい」「ロゴタイプを新しくしたい」というものでした。
サガレイ様には元々ロゴマークがありましたが、複数の営業所で使用しているサインの書体がそれぞれ異なってしまっている為、それらを統一するということが目的の一つでした。
ただ、あくまでもこれまでのロゴタイプのイメージは大きく変えずに踏襲しつつ、新しく洗礼されたデザインを、というご要望をいただきました。
今回のような、ロゴマークデザインの「リファイン」の事例は少なくありません。
その際、現在使用しているロゴマークの課題がどこにあるのか、ということを最初に考えます。
私が初めてロゴマークを拝見した時に感じた既存ロゴの課題は「ガ」と「レ」の安定感の無さです。それぞれ単体で使用する分には問題が無いかもしれません。しかし「サガレイ」という4文字の並びで見たときに「ガ」と「レ」のベースラインと接する部分が少ないことで、全体的に不安定に見えることが気になりました。
今回、デザインのイメージを大きくは変えたくない、というご要望をいただいていたため、全体のイメージは生かしつつ、この課題を解決できるようなデザインを目指していきました。
ここから具体的なデザインが始まります。
今回は下記画像のように、具体的な数値を決めながら、デザインしていきます。
既成フォントをベースに調整を加えるというデザインの方法もありますが(←ロゴの分解_case4参照)、今回はゼロからデザインする手法を選択しました。
文字の縦線の幅を100としたときに、横線の高さを50、濁点の幅は50、のようにルールを決めて、デザインしていきます。この時のルールは、現状のロゴタイプの特徴を踏まえて決めていきました。
こうして出来上がったのが、こちら。
いかがでしょうか。既存ロゴタイプがもつ雰囲気を大きく壊さず、それでいてオリジナリティのあるデザインとなりました。
しかしこれで完成ではありません。
これでも十分キレイなデザインかもしれませんが、少し弱さを感じます。その理由は「レ」の縦線の幅が細いことです。上に記載した通り、今回縦線の幅は100というルールを決めましたが、「レ」に関しては、このルールを破る必要があることに気がつきました。
そこで「レ」の縦線のみ、幅を110に修正しました。
これで先ほどのデザインで感じていた弱さがなくなり、さらに安定感のあるデザインとなりました。しかしもう一つ、違和感を感じる部分が残っています。
それは「イ」の斜め線と縦線の交わる部分。これについて詳しくツイートしたものがこちら。
「イ」をデザインする時の注意点。 pic.twitter.com/5qRNfY6HQP— 坂東進亮 (@shinsukebando) January 24, 2022
「イ」をデザインする時の注意点。 pic.twitter.com/5qRNfY6HQP
正確に、正円と直線で構成されたものですが、曲線が繋がっていないように見えてしまう、という錯視です。この錯視を無くすために最後の調整を行います。
錯視調整を行ったものがこちらです。
どうでしょうか。微妙な調整で、一つひとつは小さな変化ですが、全体のバランスやイメージに与える影響は決して小さくありません。
こうして株式会社サガレイ様の新しいロゴデザインが完成いたしました。今回は株式会社サガレイ様のロゴのリファインについて説明させていただきました。ゼロから新しいロゴマークをデザインすることと比べて、リファインは地味な印象かもしれません。しかし実際は非常に難しく奥深いデザインです。
今後もこの「ロゴの分解」シリーズコラムでは、私がデザインしたロゴマークをもとに、「ロゴの分解」のお話をさせていただきます。次回もお楽しみにしてください!
読んでいただきありがとうございました。
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