シンプルな線と和柄で「心」を表現する
ミニマル和柄デザイナー

ミニマル和柄デザイナー

YUYAさん

■高橋勇弥

宮城県・塩竈市出身。中学生から三味線をはじめ、全国大会優勝、入賞歴多数。かつては三味線奏者を生業とし、東北発・和太鼓と津軽三味線を用いた邦楽バンドのメンバーとして国内外で活躍していた。現在は「和」を絵で表現しようと、ミニマル和柄デザイナーとして活躍。さらに、地元・塩竈のコミュニティFMでラジオのパーソナリティ、Podcast"ゆるプレッソに溺れたい"の配信など多方面での活躍が見られる。

YUYAさんと三味線との出会い

・以前は三味線奏者を職にされていたということですが、どういう経緯でなられたんでしょうか?

中学三年生の時、選択授業で音楽を取っていたのですが、当時の先生が文化祭での三味線演奏を提案してくださったんです。

その授業で講師をしていた現在の師匠の演奏を初めて聞きました。音の力強さと、弾いてる奏者のかっこよさと。それがものすごく衝撃的でした。すぐ津軽三味線にはまり、部活もサボって練習していたら、師匠から「そんなに好きだったら練習を見に来ないか」というお誘いをいただいたんです。

練習を見学に行くと、ちょうど「仙台よさこい」で伴奏するための練習会をしていて、ちょっと練習してみなよ、って言われたんです。そのまま、「じゃあ弾けるんだったら舞台に立ってみる?」という話になって、一週間後くらいには舞台で演奏していました。わけも分からず弾いていて、それが全部終わった後に、師匠が「じゃあ入会してみますか?」と言ってくれたんですけど、その時、僕はもう完全に津軽三味線の虜になっていました(笑)

・演奏されてるときは、何を思ってやられているんでしょうか?

よく練習の時に、師匠から「今日はなにかいいことあったでしょ」「今日は失恋したでしょ」って言われることがあったんです!

津軽三味線はピアノやバイオリンのように音が区切られていない楽器なので、「ド」と「ド♯」の間の”ゆらぎの音”が出せるんです。だからこそ、心の内側を言葉のように相手に伝えることができる楽器だな、と感じました。なので津軽三味線を弾く時は、自分の胸の内にある想いを音に乗せたい、と思いながら演奏しています。

・そういう心が伝えられるのも三味線の魅力なんですね!

まさにそうだと思います。誰が弾いても同じ音にならない、それが津軽三味線の魅力ですね。

イラストを描き始めたきっかけ

三味線奏者を辞めてからどうやってイラストレーターの道に行かれたんでしょうか?

結婚や就職を経て、津軽三味線を触る時間が物理的に減っていきましたが、クリエイティブに何かを形にしていきたいという思いがずっと心の中にあって、表現できる場所はないか、とやきもきしてたんです。そんな時にふと、小学校ぶりに絵を描いてみようか!と思い立ち、少し描いたらそれを思いのほか褒めてもらえる機会があって。それがきっかけでInstagramに投稿するようになりました。

絵は表現方法が多彩で、津軽三味線よりもっと自由だなと感じたんです。絵自体は万人が描けるものですし、十人十色、百人百色だなって。もちろん僕はこれまで絵について専門的な勉強をしてきたわけではないので、技術的にはどうかという部分はあると思うんです。ただ、心の内を表現したり感情を乗せることに関してはもしかしたら絵を描くことでも、音楽のようにできるんじゃないかと思いました。そしたら絵に対して面白さが出てきたんです。なので今も描き続けています。

イラストを始められて一年くらいですか?

はい!Instagramに投稿を始めたのが2021年の3月です。本当に落書き程度に描き始めたので、まわりのイラストレーターさんから日々刺激をもらっています。

・え~!! 始められて1年でこのクオリティとはとても驚きました…!

・YUYAさんのイラストは空気感がとても素敵ですよね!これ(上左)とかこれ(上右)!

わー!嬉しいです。

この頃はまだアナログで描いていて、2022年1月にiPadを購入しました。なので本当に試行錯誤しながらといった感じです。最初は写真を柄にして描いてたんですが、今はデジタルの水彩機能に、和的な要素というか、自分の表現したいものが無限に描ける、という魅力を感じています。

・イラストのデザインは自分で最初から考えられているものもあるんでしょうか?

そうですね!描きたいと思った空想を、こういうのがいいな、どうしたら楽しいかな、と考えながら描いています。例えば、八坂神社で、八坂コレクションみたいなファッションショーが出来たなら面白そうだと思って、この絵(上)を描きました。

・確かにこんなイベントがあったらすごく楽しそうですね

線画ならではのシンプルさとかわいさ。イラストに込める”想い”は?

YUYAさんのイラストといえば、線画ならではのシンプルさとかわいさが印象的なのですが、イラストを描くときに大事にされていること・込める想いなどあれば教えていただきたいです

シンプルな線画は何本かで描くよりも、ちょっとした線の違いで、印象が如実に変わってくると感じています。ここの線をもう少しくねらせてみようとか、ここの余白を広く取ろうとか、簡単に描けてしまいそうなんですが、簡単に描かないようにしたいなと思っています。

誰かが何かのために使ってくれたり、どこかで見かけた時に目に留めてもらえるよう、描くときは線に想いを乗せられるように試行錯誤することを心がけています。

なんでこの線を選んだのか、なんでここに線を一本足したのか、など聞かれたときに、自分の中でしっかり理由を言えるような線画を描きたいと思っています。

・思い出深いイラストのお仕事などありましたでしょうか?

そうですね!大切な友達のタトゥーをデザインさせていただいたことです。タトゥーは肌に残るものなので、最初は「本当に僕で良いのだろうか?」と思いましたが、デザインを選んでくれたことに大きな信頼を感じ、素直に嬉しかったです。

バラをモチーフにしたい、という依頼だったのですが、流行に左右されず愛してもらえるデザインになるよう、いま持っている感性を全て込めて、想いを乗せてデザインさせていただきました。
そして同時に、描かせてもらえるとなったとき、悪いことはできないな、と責任も感じました。もしも僕が社会的に落ちぶれて(笑)この絵を描いた人は変な人なんだっていう印象を持たれるのは、あってはならないことだと思いました。

それに、この依頼は転機になりましたね。逃げ道がなくなったというか、この先絵を描いていく意味を見出すきっかけになったと感じています。

「和柄」を通して伝えたいこと

・yuyaさんは「ミニマル和柄デザイナー」として活躍されてますが、「和柄」を通して、イラストを見る方に何か伝えたいことなどがあれば教えていただきたいです!

アイコンとして何か一つ名乗りたいな、という思いがあり、誰も名乗っていないような肩書きをハッシュタグで調べて、「ミニマル和柄デザイナー」はいないぞ、いいぞとなったんです(笑)

もちろん津軽三味線を通して「和の世界」にどっぷり浸かっていたから、という理由もあります。三味線の勉強のために手踊りや唄も習っていたんですが、この行事の時にはこの唄を唄うことに意味があるとか、和柄にはそれぞれ意味があって着る人の想いに寄り添っているとか、そういう粋な想いが日本の文化の中にたくさんあると感じています。そんな大好きな和の世界観を取り入れられたらと「ミニマル和柄デザイナー」と名乗ることにしました。

僕の名乗っている「和柄」は、日本古来の模様だけではなく、和を感じる柄の総称を指しています。

たとえば三味線だって和を感じるという意味では和柄になりうるし、風情を感じる情景も立派な柄になるなと感じています。また、「春うらら」という形のないものに、色や柄を与えていくというのも、和柄を作ることになるんじゃないかと考えています。そうするとすごく心躍るのです。

・形のないものも和柄になるんですね!

このイラスト(上)も「矢絣(やがすり)」や「青海波(せいがいは)」という和柄を使っています。「矢絣」は卒業式でよく着られる柄で、矢は飛んで行ったら戻ってこないところから、「厄災を払い、出戻らない」という意味合いがあります。あまり斜めの矢絣は見かけませんが、右肩上がりに突き進む、なんて素敵じゃないかなと思いアレンジしてみました(笑)パソコン画面に描いた「青海波」は穏やかな波がずっと続いていくようにと、持続的な繁栄を願う意味合いがあります。

着物や浴衣の柄を意味合いまで考えて着ている人はそう多くはないと思いますので、僕の絵を通して柄の意味にまで興味を持ってもらえたら嬉しいな、と思います。和柄って本当にミニマルで、不必要なものをそぎ落とした柄だと思っているので、線画に自然に溶け込むのも魅力だと感じています。

「和」で溢れる京都の街。今後京都でやりたいこと。

・YUYAさんのイラストと京都の「和」の雰囲気がとても素敵な組み合わせだと感じています!今後、京都で何か新しくやろうとされていることはありますか?

僕は京都には「切り離せないほど息づく和」が存在しているな、と思います。

京都で商売や物事を始めようとするとき、その土地柄ゆえにきっと意図せず「和」の要素に引っ張られると思うんですよね。街自体は現代の人で溢れているのに、根っこにあるものがずっと昔からある伝統のもので、それがほどよく溶け合っている印象です。そしてその溶け合い具合は、僕がイラストで伝えたい魅力と似ているなと感じています。

伝統的なものを壊したいわけではなく、上手く溶けこませたいという想いが、京都の街並みとリンクするところがあるので、この街で勝負してみたい、という強い想いがあります。
溶け込んでる和の中で、誰かが目を留めたデザインが自分のものだったなら、こんなに幸せなことはないです。

・事前のアンケートで、「三味線×ことば×イラスト」使ったイベントをしてみたいとお聞きしたのですが、この「ことば」っていうのは

絵でお仕事をしたいことはもちろんですが、和柄の話のように、デザインに込めた想いを語ることで、絵をもっと楽しんでもらうことができるんじゃないか、と思います。
壮大な夢になりますが、京都で絵と津軽三味線、そして想いを語らせてもらえるイベントが出来たら嬉しいです。

等身大の飾らない自分を。ポッドキャスト”ゆるプレッソに溺れたい”

・ポッドキャストでの「ゆるプレッソに溺れたい」。毎回のトークに本当に癒されています!ポッドキャストを始めたいと思われたきっかけはなんでしょうか?

僕は、物事は究極「人」だなと、と思っています。
ただ上手いから好き!というのではなくて、この人だから応援したいという気持ちは、必ずあると思っています。
なので、Instagramの投稿だけでは人柄まで表現するのが難しい!と感じ、話を聞いてもらい、人となりを知ってもらえる環境を作ることにしました。


たまたま同郷のイラストレーターさんとInstagramで知り合う機会があり、「一緒にラジオを録ってみませんか?」と声を掛けたのが始まりです。
絵を見て僕に興味を持ってくれた方が、この人のことをもっと知りたいな、と思ったときに聞いてもらえる媒体は大切だと思いましたし、後に個展を開けるようになった時に、トークショーもできるな、と妄想を膨らませています(笑)

・ポッドキャストでは、どんなことを意識して話されていますか?

「素で話す」っていうことは一番意識しています。番組のコンセプトがカフェにいるような気持ちで聞いてほしい、というものですし、なにより等身大の自分を知ってもらえた方が、絵を見た時に人柄が思い浮かぶのではないかと思うからです。

読者の方へのメッセージ

僕が描く絵や和柄を通して、日本独自の感性や、移りゆく感情の美しさを発見してもらえたら嬉しいです。
絵に込めた想いを知ったあと、いつもより風が光って見えたり、雨が好きになるような、そんな絵を描きますので、ぜひ今後の活動に注目してもらえたら幸せです。

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