<第四回>京都ならではのデザインを見つける、街歩きのヒント


京都で見つけた素敵なデザインをご紹介する連載「京都まちなかデザイン」。

第四回目となる今回は、京都ならではのデザインを楽しむ街あるきのヒントをご紹介します。目線を上へ、下へ、いつもより視野を広くしてゆっくり歩いてみると、気づかなかった「京都らしさ」があちこちに見つかりますよ。

「鍾馗さん」は、どこを見ている?!

京都らしい散歩みちといえば、歴史深い町屋が連なる街並み。そんな通りを歩く時には、目線を少し上げてみてください。町屋の小屋根に、鍾馗(しょうき)さんと呼ばれる瓦人形を見つけられるはずです。

そのルーツは中国の道教。お寺からはじかれてくる魔物や鬼が、家に侵入してこないよう跳ね返すと言われ、家の守り神としての役割を担っています。

お寺の多い京都は必然的に鍾馗さんも多く、細身からマッチョ、強面からおとぼけ顔など、それぞれ特徴が違うのも楽しいポイントです。

また、よく観察すると、斜め上を向いた鍾馗さんが多いことに気づきます。それは、お向かいの家を睨まないようにとの気遣いからだとか。邪気を払うためにギラっと睨みをきかせながらも、お向かいさんへの気遣いは忘れない。こんな所にもまた、京都らしさを感じます。上七軒や祇園などの花街にも密集しているので、名所観光を楽しみつつ、鍾馗さんチェックも是非お忘れなく!

京都のハチ公?!待ち合わせのメッカ「高山彦九郎像」

京阪三条駅を降りると、東詰南側にどーんと現れるのが「高山彦九郎像」。

通称「土下座像」と呼ばれ、地元では「土下座前に10時集合!」のように、待ち合わせの定番としても知られています。しかし、実際は土下座しているのではなく、御所の方角を向きながら礼拝している姿なのです。高山彦九郎は、江戸中期に尊王思想を広めるため全国を渡り歩いた思想家。この銅像の姿は、彦九郎が京都を訪れた際、三条大橋から御所の灯りが見えるほど朝廷が衰退していることを嘆き、涙ながらに礼拝する姿を再現したものです。鴨川や三条界隈を散策する時には、彦九郎像の迫力ある拝みっぷりは必見です。

街の景観を壊さず、そっと注意喚起する「いけず石」

京都の細い路地を歩くと、道の角に置かれた大きな石に気づきます。その名は「いけず石」。

「いけず」とは、京都の方言で「いじわる」という意味です。狭い路地が多い京都では、車の運転者に注意喚起したり、家にぶつかるのを防いだりするために置かれ、車よけの役割を果たしています。街の外観を邪魔しないよう景色に溶け込みながら、車の運転者にはきちんと注意喚起が伝わる置き方。決して運転しづらいように、いけず=いじわるしているわけではないんですよ。

こちらは、ブルーボトルコーヒー京都六角カフェ。自転車屋さんの一角をリノベートし、2019年にオープンしたカフェですが、よく見ると店先にいけず石が置かれています。このいけず石は、リノベート前からこの場所に置かれていたもので、カフェとして生まれ変わった今でも変わらず設置されています。街の風景にもお店の雰囲気にも溶け込んで、とても素敵ですよね。

京都に暮らす人々の高い防火意識がうかがえる、赤い「消火用バケツ」

数多くの世界遺産、国宝、重要文化財を抱える京都。町屋をはじめとした木造建築も多いこの街では、しばしば消火用と書かれた赤いバケツを目にします。沢山の遺産や家を守ろうという、京都人の防火意識の高さそのものの表れなのです。

京都市内には、狭い土地に家屋が密集しているエリアが多くあります。こちらの写真は、京都の街なかで撮影したもの。隣接する家との距離がものすごく近いのが分かります。こんな環境で火災が起これば、家から家へ、火が燃え広がることが想像できます。また、消防自動車が入るには狭すぎる路地が多いのも京都の特徴です。

このように、火災の危険性を多くはらんだ京都ですが、実際の京都の火事発生率は全国の中でも少ないのです。

都道府県別の出火率を表す令和元年のデータによると、京都の出火率は全国で44位。これは、大切な遺産や自分の家を守るという気持ちから生まれた高い防火意識の賜物のように感じます。京都に暮らす人たちは、日常的にこの消化バケツを見ることで、防火への意識を高めているのかもしれませんね。

「バッタリ床几(しょうぎ)」で夕涼み、町屋での暮らしに憧れる

京都の街なかには、築100年を超える町屋を数多く目にします。そんな町屋の軒下にあるのが、揚見世(あげみせ)と呼ばれる収納可能な折り畳み式の台です。

通称「バッタリ床几(しょうぎ)」といい、台の部分をバッタリ倒せば、店の商品を陳列したり、休憩時に腰かけたりして使うことができます。夏場は、夕涼みがてら近所の人が集い囲碁や将棋を楽しんだり、夜には子供たちが腰かけて花火を楽しんだりと、近所の人々の憩いの場としても活用されています。そんなシーンを想像すると、ますます高まる町屋暮らしへの憧れ。自分の家にバッタリ床几があったら何をするだろう?そんな想像を膨らませるのも楽しそうですね。

家の外壁を守る、「犬矢来」と「小さな鳥居」

続いては、目線を少し下に落とした時に発見する京都らしいデザインのご紹介です。

京都の町屋などでよく目にする犬矢来。

そして、家の壁などに設置されている小さな鳥居。

どちらも、元々は犬の小便除けとして設置されたものです。張り紙で注意喚起をするよりも、景観美を保ちながらそっと注意を呼び掛ける様子が、先にご紹介した「いけず石」と似ています。更に、犬矢来は泥棒除けや、車の泥はねよけとしても効果を発揮。美しさを保ちつつ、利便性も兼ね備える仕掛けですね。

今回は、京都ならではのデザインを楽しむ街あるきのヒントをご紹介しました。それぞれに、京都に暮らす人々の粋な計らいや、生活の知恵が垣間見えます。

暑さが和らぎ、日に日に秋めいてくるこれからの季節。京都に住む方も、そうでない方も、今回ご紹介した京都らしいデザインを頭の片隅に、京都の“街ブラ”を楽しんでくださいね!

writer/photoさと

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