<第一回>時代が変わっても色あせない、京都の素敵な包み紙

今日から、KYOTO LETER編集部が「京都まちなかデザイン」という連載をお送りします。この連載では、デザインという視点から見た、新たな京都の魅力を発信していきます。一緒に京都の街を散歩している気分で、ゆるりとお付き合いください。

第一回目のテーマは、「京都で出合った素敵な包み紙」です。お店で商品を購入した時や、頂き物を受け取った瞬間、美しい包み紙に、ハッと心を奪われたことはありませんか?中を開ける前から胸が高鳴る感覚は、誰もが一度は経験したことがあるはず。商品が主役なら、脇役ともいえる包み紙。今回は、その包み紙にスポットを当て、デザインや誕生秘話を紐解いていきます。

柔らかな和紙と「茶経」が目を引く、一保堂茶舗の包み紙

1717(享保2年)創業の一保堂茶舗は、京都の日本茶専門店です。抹茶やほうじ茶、ティーバッグや茶器まで幅広く取り揃え、どんな場面でも楽しめる「お茶のある暮らし」を提案。贈り物から日常使いまで、お茶のことならなんでも揃う、心強いお店です。


そんな一保堂茶舗の包み紙は、世界で初めて著された茶の専門書「茶経」の冒頭部分が印刷された、とても珍しいもの。

京都本店、東京丸の内店、オンラインショップで、一部商品のみで使用されています。柔らかく優しい手触りで、他とは一線を画す高級感が漂います。

しなやかな手触りの和紙が、丁寧に織り込まれて包装された姿はとても美しく、開けるのが勿体ないと思うほど。見事な佇まいから、お茶の老舗としての品格を感じます。

味わい豊かな抹茶、香ばしく香り立つほうじ茶、夏にごくごく飲みたくなる麦茶。お茶は昔から変わらず、私たちの日常にあるものです。そんな日常に寄り添う一保堂茶舗のお茶は贈り物にもぴったり。優しく丁寧に包まれたお茶は、誰かがほっと一息つく日常のひとコマに、癒しと安らぎを与えてくれることでしょう。

鮮やかな“末富ブルー”が美しい、京菓子司末富の包装紙

1893(明治26)年創業の京菓子司 末富は、京都を代表する老舗和菓子店です。伝統と格式を守りながら進化する末富の和菓子は、店頭での販売に加え、京都を代表する寺社や、茶道の家元の御用をつとめてきました。また、世間が大量生産の時代に入っても、昔と変わらず、ひとつひとつ職人の手で丁寧に作ることを大切にしています。

末富といえば、「末富ブルー」と称される色鮮やかな包み紙が、お店の代名詞となっています。ツルっとした手触りの鮮やかな包み紙に、ぴしっとくくられた掛け紐。店員さんが包んでいる所作を見ているだけで、自然と背筋が伸びます。

この包装紙は、末富2代目・山口竹次郎氏が、日本画の池田遥邨画伯に意匠を依頼。二人で意見を出し合い完成したのは、斬新でありながら派手過ぎず、和菓子を包み込む上品なデザイン。そして、目の覚めるようなブルーは、まず白を敷き、その上に青を塗って厚みをもたせ作り出される色合いです。その手法は、当時の印刷屋さんが大変な苦労をするものだったそう。それでも、「この色目以外にはあり得なかった」と語られるほど、意匠にも色合いにもこだわった包み紙です。

和菓子は、お菓子の銘で楽しみ、色や形を目で見て楽しみ、味わうものです。そんな和菓子を包む包装紙も、同じように目で見てじっくり楽しめば、その世界観をより深く感じることができそうですね。

ハイカラで遊び心あふれる、大極殿本舗「春庭良(カステーラ)」の包み紙

(季節ごとに変わる暖簾が目を引く大極殿本舗六角店 栖園)

大極殿本舗は、1885(明治18)年に「山城屋」という屋号で開業。二代目が長崎で学んだカステラ作りを活かし、京都でいち早くカステラの製造販売を始めたお店です。

今回ご紹介するのは、そんなカステラの包装紙。(こちらのカステラは、本店と、六角店でのみ購入可能です。)

大正時代に使用していたものを復刻した包装紙は、なんともハイカラなデザイン。細かな装飾に青写真、外国人らしき人物画や、ちりばめられたアルファベットや漢字。カステラの言われや効能などの記載もあり、遊び心に富んだデザインが、目で見て楽しませてくれます。

あくまで和菓子として考えて作られたカステラの商品名は、大和言葉の裳い豊かな「春庭良(カステーラ)」と名付けられました。卵のしっかりとした風味が際立つ味わいで、底面のザラメが食感にアクセントを加えています。

大極殿本舗に行けば、季節ごとに掛けかわる軒先の暖簾や、毎月異なる味わいの琥珀流しから、季節の移ろいを感じます。同時に、創業当時から変わらぬ春庭良(カステーラ)は、移ろう季節を楽しみつつも、昔から変わらぬ味を守り続ける尊さを教えてくれるような気がします

今回は、京都で見つけた素敵な包み紙をご紹介しました。作られたのは随分昔のはずなのに、今もなお色あせない。時代を超えて多くの人の印象に残り、見る楽しさを与えてきた包み紙には、お店のこだわりと愛情が詰まっていました。京都でお買い物をする時は、包み紙のデザインにも是非注目してみてくださいね。





一保堂茶舗
https://www.ippodo-tea.co.jp

京菓子司 末富
https://www.kyoto-suetomi.com

大極殿本舗 六角店
住所:京都府京都市中京区六角通高倉東入ル南側堀之上町120




writer/photo さと

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