こと京都が教える -京都伝統野菜の九条ねぎのコト-第八回目



昔の暦上では、9月は秋の季節。現代では残暑特有の暑さが残りますね。盆地ゆえに、山に囲まれた京都市内では暑さが外に逃げず停滞します。また、台風の上陸にも脅かされた今年の9月、農業に携わる私たちにとっては心も落ち着かず、慌ただしく台風対策に努めています。

台風が過ぎ去り、なんだか急に肌寒くなり、一気に秋めいたなと感じました。

「秋の初風」という言葉がある通り、秋の訪れを初めて感じさせるような涼しい風。季節の変わり目、刹那な季節の始まりですね。夕焼け空も、夏とはまた違った凛とした深みの色合いです。

さて、今月で8回目となる連載のお手紙。私たちが生産している畑の様子や九条ねぎのコトについて書かせていただきます。


9月、残暑になって馳せる夏の農作業

夏も終わり、残暑の京都。

これから太陽が昇る段階の朝の時間帯、少しひやっとした涼しい空気感に身を包むことができ、かすかな秋の始まりを感じます。

ジリジリと照りつき、痛く感じていた陽射しも和(やわ)らぎ、少し前までは身の危険を感じていたなぁと、今年もなんとか夏を乗り越えたことに想いを馳せます。


夏の季節は1日の日照時間が長いですよね。「陽が出ているうちに」と、農業を営む方たちは自然と朝も作業開始時間が早くなったり、夕方を過ぎてもまだ明るく「もう少し」と作業を続け、「もうこんな時間か」と視界が暗くなる手前まで作業をすることも。

私たちも、夏の時期、朝は夜明けとともに作業を開始していました。

出勤する朝の5時過ぎ頃、日中はあまり見かけない農家の方々が作業されている風景がちらほらと。作業効率や夏の暑さで身体の負担を考慮すると、自然の摂理に沿って人間も活動しているんだなぁということを感じられました。

屋根もなく、炎天下のもとで立っているだけでも体力が消耗する時間帯も、朝早くから作業開始することで避けることができます。

効率よく作業も進み、とは言え、連日の暑さの中にいることには変わらず疲労は溜まっています。ものづくりに欠かせない資本の身体も大事なので、明るいうちに帰宅して翌日の作業に備えます。

畑の九条ねぎたちの生育で愛情を注ぐためにも、身体も心も万全な状態を保つことも大事です。

昔ながらの干し苗での栽培

これは、九条ねぎがこれから育っていく前の定殖作業を終えた風景。みなさんがよくイメージされている、種から芽が出た「線香苗」とは異なり、「干し苗」が植(うわ)っています。干し苗は、「切り苗」とも言われています。

京都での、昔ながらの九条ねぎの栽培方法のひとつ。季節やその環境に合わせて、私たちも干し苗を使って育てています。

このように、根っこの部分から完全に引き抜き収穫したねぎの根本を切り落として残し、畑の土のベッドに広げてそのまま寝かせて天日干し。何日か置いて完全に干して乾燥させた状態にします。

干すことで発根(はっこん)が良くなり、成長も早く、大株に育つという利点があります。

干し苗の周りの葉は乾燥していて全体は干からびたように見えますが、根っこの部分は夏の暑い間でも休眠状態で生きています。この季節、少し涼しくなってきた頃に植え付けると、しっかり発根します。九条ねぎたちからは、「生命力があるなぁ」と感じることがあるのですが、この干し苗もそのひとつです。

種から育てた線香苗だと、やはり細くて暑い中では焼けて消えてしまう(!)こともあります。自然環境的に、どうしても弱々しくなってしまう時など、この干し苗で補植するなどして対策をすることもあります。一度立派に育っている苗なので、心強い存在です。

この季節から冬にかけて移ろいゆく秋葱

今の季節にお届けしている九条ねぎは、夏葱のように細く、軽く、すらっとしていて、1年の中ではツンと酸味を感じやすいです。

これから日増しに涼しく、寒くなっていく中で、葉が太く、手に持った感じも少し重くなっていきます。まだこの時期の変化はわずかながらで、食べていただいている方にとっても分かりにくい変化ではあります。

日々、私たちは畑や工場で毎日ねぎに接していると、そんな変化に嬉しく思ったり、四季の移ろいを感じています。作り手としての、ささやかな楽しみです。


9月の京都・南丹市美山町の秋の装い風景

第4回目の5月頃のお手紙で、美山(みやま)エリアでコメ作りをしていることを書かせていただいておりました。その頃は、ちょうど田植えの時期でしたね。新緑も青々として絶好調な山々の中、広い水田にて田植え作業をしていたところも、この9月はいよいよ稲刈りシーズン突入!

黄金色の稲穂の景色が広がりました。

美山で作業しているスタッフより、美山の写真を送っていただいたので、こちらでも風景をお裾分けさせていただきます。

秋を感じた景色やシーン、皆さんもありますか?






九条ねぎを通して、食で感じる豊かさや幸せを多くの方に感じていただきたいと願っています。

「九条ねぎの四季ってどういうことだろう?」「どんな物語があるのだろう?」という部分を、これからも季節に合わせてお伝えできればと思っております。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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