こと京都が教える -京都伝統野菜の九条ねぎのコト-第七回目


「秋風月」(あきかぜつき)という、陰暦での8月の異称があるそうです。秋が近づいてくることを、風が知らせてくれるという意味からきているとのこと。現代ではまだまだ夏真っ只中ではありますが、暦上では涼しい秋の匂いを感じていたのでしょうか。

京都は盆地でもあり、8月を過ぎても残暑という暑さが残りますが…。このような言葉を知るだけでも、秋に思いを馳せて、「この暑さをもう少しだけ耐えれば」と、ちょっと気分が上がりませんか?

さて、今月で7回目となる連載のお手紙。私たちが生産している畑の様子や九条ねぎのコトについて書かせていただきます。

夏の産地のひとつ、丹後農場について

京都の夏は、九条ねぎの生産量が一気に少なくなります。毎年の温暖化で炎天下の中、生育しづらい環境下でもあり、人も同様、暑い中での生産は過酷なものでもあり、作り手も減ってきていました。

「作りにくくても、夏でも美味しい九条ねぎを食べていただきたい」「安定的にお届けできる体制を」という思いを持ち、私たちは2021年の春頃より、「海の京都」と呼ばれる京丹後市での産地を開拓し、生産することになりました。

写真の通り、広大なねぎ畑が望むことができ、私たちが持っている産地の中では1番の広さです。少し傾斜にもなっていて、奥行きも感じられます。

丹後農場は、亀岡・美山エリアと同様、暑い夏でも冷涼な気候で暑すぎず、ねぎたちにとっても育ちやすい自然環境。山に囲まれた盆地のように気温が温存されることはないので、夜温もグッと下がり、畑のねぎたちは暑くて寝苦しいなんてことはなく、エネルギーを蓄えつつすくすくと育ってくれます。

山間地域でもある亀岡・美山エリアもそうですが、ふっと抜けるように、時には汗ばむ身体を撫でるように吹く風が心地よく、農作業をしている中での安らぎとなっています。丹後エリアは、海も近いので少し塩っぽさを時には感じることも。

産地それぞれの特性を感じつつ、ものづくりを行なっています。

同じことはない、ものづくり

丹後エリアのねぎ畑はそれぞれの畑が広く、隣接しているところもあったり、作業する上でも利点が多くあります。気をつけることとしては、広大な分、例えば病気が発生し広がってしまうと畑全体に影響が出る可能性もあり得ます。なので、生育調査や日々のねぎたちの観察をより注意深く行なったり、必要に応じて防除作業を予定に組み込んだりと努めています。

畑の場所、広さや環境下によって、気をつけることや意識することがそれぞれであります。ただ種を蒔いて生産するだけでなく、それぞれの地域の特性を知り、天候や気温など自然の変化に臨機応変に対応し、ねぎ作りを行なっています。

袋詰めしたり、カットしたねぎなど商品としてスーパーの店頭に陳列されると同じ九条ねぎではありますが、なかなか知り得ない、それまでのストーリーがあるのです。

2年ぶりの京都の夏

先月の話になりますが、古くから続けられていた京都の伝統行事「祇園祭」が、今年は2年ぶりに無事に実施されましたね。毎年の恒例行事、夏の風物詩。夏になると賑わい出す町、夜の出店を楽しみにしていた思い出は、小さい頃からみんなそれぞれで持っていた行事。7月になると、コンコンチキチン♪とお囃子の音が町でも、テレビからも流れています。そんな音も久しぶりに耳にすることができ、「あぁ、夏がきた」と感じます。時が止まってしまっていたものが動き出し、ほっとする今年の夏。

とはいえ、日中の暑さは年々増していて、外を少し歩くだけでもすぐに汗が背中をつたいます。

そんな中でも、「涼」を探す楽しみ、「涼」を見つけた時のちょっと気分が上がるような発見があるのも好きです。

古くから酷暑に悩まされてきた京都の人々は、少しでも涼しく暮らせるように生活様式、あるいは互換で涼を取り入れてきました。

まだまだ今月も暑い日は続きます。「涼」を感じるシーンを見つけながら、残りの夏を過ごしていきたいと思います。




九条ねぎを通して、食で感じる豊かさや幸せを多くの方に感じていただきたいと願っています。

「九条ねぎの四季ってどういうことだろう?」「どんな物語があるのだろう?」という部分を、これからも季節に合わせてお伝えできればと思っております。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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