こと京都が教える -京都伝統野菜の九条ねぎのコト-第四回目

「新樹光(しんじゅこう)」という季節の言葉をご存知でしょうか。俳句では、この季節になるとよく使われる言葉のひとつです。

“新樹”とは、若葉におおわれる初夏の木立のこと。新樹の反射によって周囲がみずみずしく見えることを“新樹光”と言います。

木漏れ日の中の新樹、そよ風になびく新樹。その色合い、音、香りなど、清々しく感じられるのは、この季節だけの楽しみではないでしょうか。

うっすらと汗ばみ、爽快な暑さを感じるようになった薄暑でもあるので、みずみずしい新樹に包まれる山や野には生命力がみなぎっていることを肌で感じながら、初夏を過ごしていきたいですね。

さて、今月で3回目となる連載のお手紙。私たちが生産している畑の様子や九条ねぎのコトについて書かせていただきます。

この季節に見かける葱坊主について

木々や草が青々と活発になる時期、ねぎにも花が咲きます。見たことありますでしょうか?

このようにねぎの葉先に蕾が現れるのですが、気温のあたたかさの影響で早くて春先から出始めてきます。

この蕾が開くと、このようにこんもりと花が咲きます。

可愛らしさもあるのですが、“美味しい九条ねぎを作り届けたい”と思う私たち農人にとっては実は天敵なのです。

花が咲くと、ねぎの葉の部分が固くなってしまう、つまり、柔らかさがなくなってしまい、食べるときの食感による美味しさが損なわれてしまいます。この季節に収穫するねぎは、定殖時に葱坊主が出る時期を遅らせる品種に切り替える対策をしています。

葱坊主が出来るということは、残り少ない栄養分が花を咲かせるために取られているということになります。ねぎに蓄えられる栄養を切らさないために、葉に直接栄養を入れる葉面散布と言う作業をこまめに行っています。

収穫を迎える時までねぎたちの様子を伺いながら生育管理し、お客さまに美味しい九条ねぎをお届けできるようにと、農人たちの日々の影の努力があるのです。

ねぎの花言葉について

ねぎは野菜ですが、花が咲くと言うことで、ここで花言葉をご紹介します。

(おそらく、花と捉えて調べる方はあまりいらっしゃらないかと思います…!)

「笑顔」「ほほえみ」「愛嬌」「くじけない心」

この4つです。言葉で改めて見ると、「おぉ〜!」というちょっと発見した感じと、私たちからすると「なるほど」と納得する部分もあります。

「くじけない心」は、まさに、ねぎたちからは生命力の強さを節々で感じています。

また、数ある野菜の漢字がありますが、「葱」と言う漢字には「心」が含まれています。私たちにとっては見慣れた字でもありますが、ポジティブな花言葉たちを胸に、真心を込めてものづくりに励んでいきたいものだと、畑以外のところでも私たちに気付きを与えてくれて、スッと背筋を伸ばしてもらっています。“葱に感謝”です!

※ノートの写真は、ねぎの選別・調整時に出る残渣を和紙にして作ったオリジナルのノートです。ほんのりと香りがします。

5月の京都・南丹市美山町の風景

京都市内から車で1時間ほど、北上し山間地にある美山町(みやまちょう)。日本の昔ながらの風景が残る、“かやぶきの里”があります。

市内からどんどん緑の割合が増えていく景色の移り変わりや、ぽつぽつと茅葺き屋根の家が現れていく様子を楽しめる道中、ツーリングでも来られる人気スポット。

今の時期は梅雨前で天候も安定し、山々がイキイキとした様子や美味しい空気も楽しめるのでちょっと足を伸ばしてお出かけ先の候補にぜひ!

そんな、自然の新緑も絶好調な時期に、美山町で田植えを行っております。ねぎ作りとはまた別の事業ですが、もともとねぎを生産していた畑を水田にしたりして、美山の地域活性のひとつとしても毎年ねぎの畑と転作してコメ作りをしています。

秋の稲刈りの時期に、稲穂で広がる景色が望めるのを楽しみにしています。

―――――――――――

九条ねぎを通して、食で感じる豊かさや幸せを多くの方に感じていただきたいと願っています。

「九条ねぎの四季ってどういうことだろう?」「どんな物語があるのだろう?」という部分を、これからも季節に合わせてお伝えできればと思っております。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

この記事をシェア!

好きが見つかる連載の他の記事
好きが見つかる連載一覧 >

グルメの他の記事
グルメ一覧 >

日本と韓国のロースターから仕入れたコーヒーを手軽に楽しめる 「mixture coffee stand ㅎ³」
京のお野菜や食材を思いきり楽しもう! 嵐山のココロとカラダにやさしいお店「musubi -cafe」
おしゃれイタリアンで京都ランチ。
ロビンソン烏丸さんのパン食べ放題をぜひ楽しんで。
チェジュ島の郷土料理が味わえる韓国食堂「하하하(ハハハ)」