KYOTO LETTER 編集部
最近では映画『流浪の月』でおなじみの小説家、凪良ゆうさん。 凪良さん、実は京都在住の方なんです!ご存知でしたか? BL小説、一般文芸、そして映画でもご活躍の凪良ゆうさんが 2022年夏、2年ぶりの長編小説を出版されました。 タイトルは『汝、星のごとく』。そしてこの最新長編小説、通称『汝星』がこの度、2022 年下半期直木賞の候補作に選出されました!惜しくも受賞には至りませんでしたが、大注目の作品。今読みたい小説『汝、星のごとく』の魅力を KYOTO LETTER 編集部よりお伝えします。
『汝、星のごとく』とはどんな小説なのでしょうか。
こちら、ふたりの男女がものすごく長い年月を経ながら進んでいく恋愛小説なんです。その様はまさ大河小説のよう。ふたりの主人公、櫂と暁海が成長したり、しなかったりする部分を一様に読み進め、さらには周りの人たちもそれぞれ時間を経ていきます。
中でもKYOTO LETTER編集部オススメの見所は、暁海の女性としての成長です。 かつて、思い切りの良い男の子であった櫂の後ろに隠れるように登場していた暁海ですが、彼女が どんどん強く賢く逞しい女性へ成長していきます。人目を気にせず、自分の信じたものを守り突き進むことのできる女性となります。
「わたしは愛する男のために人生を誤りたい」
これは『汝、星のごとく』発売当初、書籍帯のキャッチコピーとして展開されていた一文。今となっては有名になり過ぎたほどの、『汝、星のごとく』の中で暁海が口にするセリフです。
小説中で暁海はどんな気持ちでこのセリフを口にしたのでしょうか。 その時の彼女の胸のうちに、幼い日の彼女は映ったのでしょうか。 大人の力に足掻くことができなかったほんの小さな子どもであったふたりが、たまらなく立派で強い大人になる様子はたまりません。
例えば読者のあなたが、序盤のふたりと歳が近かったら。それはふたりの未来も、あなた自身の未来をも楽しんで読むことができます。
もしあなたが社会に出たてならば。慣れない仕事とプライベートの両立に悩んでいませんか? このふたりのように、あなたの周りで寂しい思いをしている友人、恋人はいないでしょうか。 さらに、あなたが自立した一端のおとなであったなら。ふと昔に巻き戻されるような瞬間はありませんか? 自分や周囲の人のお別れの時を、ふと考えてしまう日はありませんか?
凪良ゆうさんの小説の魅力は、読者は主人公と全く同じ経験をしたことがないにしても、その痛みや苦しさがフラッシュバックのようにビリビリと心へ届いてくる点です。 あなたは櫂とも、暁海とも全く違う人生を歩んできました。けれどもなんだか自分ごとのように追体験してしまう。そんな魅力が凪良ゆうさんの小説にはあります。
この『汝、星のごとく』は 2022年8月に発売されてから、僅かな時間で多くの読者を感動させ、清らかな気分にしてくれたことでしょう。 まさに感涙必至。 エンタメ小説という、半ばストーリー性重視の小説ジャンルの中では実に現実的な物語といえます。
タイムスリップなど小説ならではの異世界ではなく、小説の見せてくれる私たちの日常の深さ。そんな超日常を描くエンタメ小説、これもまたとても面白いのです。 芥川賞と並ぶ著名な文学賞である、直木三十五賞。 通称「直木賞」は、そんなエンタメ小説の中から優れた作品に贈られる、半年に一度のアワードです。候補作5作品の中の1作に選ばれた『汝、星のごとく』。惜しくも直木賞受賞には至りませんでしたが、新たに2023年本屋大賞(全国の書店員の投票で決まる大賞)にもノミネートされるなど、実力のある大注目作品です。京都ゆかりの小説家、凪良ゆうさんの最新作『汝、星のごとく』、ぜひ読んでみたいですね。
超日常が描かれていることから、リアルな恋愛小説が読みたい方やエンタメ小説を通して今の世の中を見つめ直したい方などにはとても魅力的な作品なのではないでしょうか。
幼少期、学生、社会人…。長い年月を経て進んでいく物語の中の登場人物に、現在のあなた自身を重ねて楽しむことができるかもしれません。
ぜひお近くの書店でお探しください。きっと素敵な読書体験をしていただけますよ。
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