そこでしか出会えない世界を

舞台俳優・朗読家

広田ゆうみさん

photo:松原豊/office369番地

■広田ゆうみ
1994年より京都を拠点に俳優として活動。1996年より2006年まで演劇ユニット〈小さなもうひとつの場所〉にて別役実作品を多数上演。2007年より、演出家 山口浩章、俳優 二口大学と〈このしたやみ〉を結成、国内外各地で公演を行う。2010年より二口大学と〈広田ゆうみ+二口大学〉を結成、演出を担当し別役実作品を国内各地で上演している。また、朗読家として個人で活動、別役実の童話を多数朗読するほか、舞踊・能楽・合唱等、他分野との共演も行っている。2009年 文部科学省 地域の教育力をイノベーションするワークショップデザイナー育成プログラム(大阪大学第一期)修了。朗読劇サークル〈読書会〉ナビゲーター、龍谷大学国際学部客員講師、京都若者サポートステーション就労支援事業講師等。

ご自身の作品・活動について

俳優・朗読家として舞台に立つほか、ワークショップ(一般の方向け・俳優向け)にも携わっております。ときどきへなちょこ落語もいたします。 どれもあまりまめではないのですが、活動等こちらでお知らせしております。

Facebookページ https://www.facebook.com/yuumi.hirota/

広田ゆうみ+二口大学blog http://hirotafutakuchi.blog.jp

このしたやみwebsite http://konoshitayami.sensyuuraku.com/

活動に対するこだわりについて

劇作家・別役実さんの童話に、『小さなもうひとつの場所』(三一書房『星の街のものがたり』所収)というお話があります。「世界で最初に発明された箱」の話です。かいつまんでいうと(もちろん読んでいただくのがいちばんですが)、「箱」というものは、その《内側》で「小さなもうひとつの場所」を閉ざし込んでいると同時に、その《外側》で「小さなもうひとつの場所」以外の全世界を閉ざし込んでいるのだ、ということが描かれています。 全世界と拮抗する小さな場所。 それがこの世界を生き延びるためのひとつのよすがであり、それによってひとは確かに救われることがある、と信じています。 自分の携わる作品や活動が、そのような「小さなもうひとつの場所」のひとつであればと願っております。

記憶に残っている作品や仕事について

それぞれに記憶に残っていますが…… 例えば、日本の劇団が初めて来たというロシアの街で公演をしたときのこと。終演後、観客の方々が舞台に押し寄せてきて、握手を求められるやら、サインを求められるやら(漢字で書いて、と)、お花をくれるやら、パンをちぎって食べさせようとしてくれるやら(!)、面映ゆいながらありがたく、真摯に立てば人と人として伝わるのだと感じました。 また最近でいえば、2020年、コロナ禍で公演中止や延期が相次いでいた頃、いち早く再開した三重の民間劇場・津あけぼの座で、再開第一弾となる公演をさせていただいたときのこと。劇場側含め或る覚悟のようなものを抱えつつの公演でしたが、上演前の客席から伝わる熱と、終演後の湧き上がるような拍手に、胸打たれました。演劇は、舞台は、こんなにも待たれていたのだと。あの拍手をきっと忘れないと思います。

これから挑戦したいこと

敢えて言うならば、何かに挑戦してゆく、という感覚はあまりないようです。いまここを最前線として、ただ舞台に立ち続け、そこでしか出会えない世界を描き続けたいと思います。

読者の方に伝えたいことやメッセージなど

生(なま)の表現にふれる機会が失われつつある昨今(コロナ禍以前からですが)、だからこそ、身を伏せながらでも、灯を絶やさないということを考えます。生の舞台には、あえかなもの、みえないもの、はかないもの、けれども強靭で大切な何かが行き交っています。そういった言葉にならないものの一端でもお届けできれば、そして、今すぐでなくても、舞台に足を運んでいただければ幸いです。

この記事をシェア!

俳優/モデルの他の記事
俳優/モデル一覧 >

広田ゆうみ
そこでしか出会えない世界を