サンノさんと一緒に
イラストのインスピレーションを発見する旅に出よう! #2日目

ポップアートへの旅

ポップアートへの旅


サンノさん

こんにちは、フリーランスでイラストレーター・グラフィックデザイナーのサンノです。

今回は第二回目の記事ですが、一回目の記事は自己紹介を兼ねた「これから連載するテーマについての説明」というような感じでしたので、私の中では実質今回が本格始動一発目、今から暴れ出さんとす獅子の気持ちを抑えつけての執筆となります。

しかし自分の想像以上に筆がめちゃめちゃ遅く、モタモタしていたら早速KYOTO LETTERさんから「サンノさん、連載の方いかがでしょうか?」と催促のご連絡をいただきヒヤヒヤしました。(本当に申し訳ありません)

今回のテーマは「ポップアート」!

記事を書くにあたり、自分のイラストについて考えてみました。自分のイラストについては、ご覧いただいた方からたまに感想をいただくことがあり、どれもとても嬉しいのですが、その中でもよく「ポップ」と表現していただくことが多いです。

私自身、どことなく自分のタッチは「ポップ」であるという意識があり、世の中を見渡しても様々な「ポップ」なイラストやデザインがある、と感じています。しかし「ポップ」とは具体的に、どういう意味なのでしょうか?

いったい、どんなものが「ポップ」なのか?なんとなく、感覚的に使っている表現、ポップ。

今回の記事では、「ポップ」たらしめる要素について考えながら、あらためて「ポップ」から得られる創作のヒントはないか、探究してみたいと思います。

まず「ポップ」という言葉はどこからくるのでしょう。

考えてみたところ、「大衆向け・人気のある・一般的」などの意味を持つ英単語としての「Pop (= Popular) 」そのままというよりは、「ポップアート」からつながる言葉なのではないかと思いました。

「ポップアート」は、1950年代半ばのイギリスでうまれ、1950年代後半のアメリカで全盛期を迎えた現代美術の芸術運動です。

それまでアメリカで主流だった「抽象表現主義」への反発としてはじまった芸術運動なのですが、ポップアートは、抽象表現主義における情緒的な表現に対して、身の回りに溢れる大量生産された日用品やコミック、新聞、広告、またマスメディアによって記号化された芸能人などといった「大衆文化」の図像を主題として利用するという、一見すれば「これって、芸術?」と首をかしげるようなものでした。現代の日本に置き換えると、スーパーのチラシを切り抜いて貼ったり、ユニクロの絵を大量に並べまくったり、『鬼滅の刃』のようなタッチででっかく描いたり…みたいな感じでしょうか。

このポップアートの動きには、第二次大戦後に実地されたアメリカの戦後復興策が背景にあります。それは日用品などの大量生産・大量消費の文化であり、ポップアートにはそういった大量消費社会を批判する意味合いの込められた作品もあれば、ただ単純に大衆の日常風景を切り取るという意図で制作されたものもありました。

有名なアーティストとしては、例えばアンディ・ウォーホルやロイ・リキテンスタインなどがあげられると思います。


1:アンディ・ウォーホル《Campbell’s Soup Cans》1962年、キャンバスにアクリル・メタリックエナメル塗料

2:アンディ・ウォーホル《Green Coca-Cola Bottles》1962年、キャンバスにアクリル・スクリーンプリント・鉛筆

3:アンディ・ウォーホル《Marilyn Monroe》1967年、スクリーンプリント


4:ロイ・リキテンスタイン《Crying Girl》1964年、スチールにほうろう

5:ロイ・リキテンスタイン《Drowning Girl》1963年、キャンバスに油彩・合成ポリマー

コカ・コーラにCampbellにマリリン・モンロー、アメリカですね~!リキテンスタインの場合はコミックストリップから影響を受けた作品が特に有名で、太い線や鮮やかな色彩などを使って描いています。

上記で主題となっている商品や人物は現代の日本でもよく見かけると思うので、アメリカに行ったことがなくてずっと日本で暮らしている人にとっても、ポップアートはそれなりに受け入れやすいアートなのかもしれません。

(そもそもポップアートの題材である大量生産された商品は、お客さんの目にとまるように商業的なデザインが施されているものだったり、大衆に受け入れられている作品も瞬間的に目をひいたり、内容が分かりやすいものだったりするとも思うので、それらを組み込んだポップアートは大衆にとっての「鑑賞しやすさ」があるように思います。)

以上から考えてみると、「アメリカンコミック」「カートゥーン」のような線のタッチ、太くてしっかりとした線、鮮やかな色使い、解釈の余地のうまれない明確な表現などは、現代において「ポップ」と言われる見た目に多く共通する要素なのかもしれません。

私も、趣味でもお仕事でも、イラストは太めの線で描くことがほとんどで、暗い色を使う機会は少ないです。

ざっくりとまとめてしまいましたが、いわゆる「ポップ」なイラストが描きたいときは、上記の要素を組み入れてみるとよろしおす、かも。

ではポップアートからは、さらにどのようなヒントが得られるでしょうか?


個人的には「その時代の風景を切り取る」というテーマが面白いなと思いました。ウォーホルのような、商品を単体で描く表現をそのまま真似てしまうと、それこそウォーホルのパロディのようになってしまうと思いますが(それも一つのアート作品としては面白いのかもしれませんが…ただ著作権的にも良くない気がする)、物質ではなく、文化や生活など“その時代の人”に焦点を当ててみるのも楽しそうです。

例えば、iPhoneでSNSを眺めている人とか、現代の風景の切り取り方としてかなりベタですが、数十年後に見ると懐かしい風景画として新たな味が加わるかもしれません。

またリキテンスタインはゴッホの「アルルの寝室」などの名画を、自身のコミック風のタッチで描いたりもしているのですが、それも面白い~。

6:フィンセント・ファン・ゴッホ《アルルの寝室》1889年、キャンバスに油彩

7:ロイ・リキテンスタイン《アルルの寝室》1963年、キャンバスに油彩・Magna(アクリル)

去年の5月ごろに、セーラームーンの特定のワンシーンを各々のタッチで描く#sailormoonredraw というインターネットミームが流行りましたが、似たバイブスを感じます。

8:参加したやつです。

リキテンスタインの作品を見ていると、漫画っぽさに寄せる描きかたもしてみたい、という気持ちも湧いてきます。セリフを書き入れるとか、トーンを貼るとか、コマの枠線を描くとか、そういったアメコミテイストのイラスト作品はすでにめちゃくちゃたくさんありますが、めちゃくちゃかわいいからやってみたいです。

こういった表現にはアナログ的な魅力が含まれていると思うので、ポスターやグッズなどの、印刷物に使うと合いそうな気がしますね。

さて、これをお読みのかたはいかがでしょうか?(締めに入ります)

インスピレーションの湧き方は人それぞれだと思いますが、ポップアートの背景や作品を調べてみると、もしかしたら何かが自分にとっての刺激、ヒントになるかもしれません。

今回はウォーホルとリキテンスタインの作品を中心に紹介しましたが、ポップアートで活躍していたアーティストは他にもたくさんいるので、ぜひチェックしてみてください。


私もイラスト描いてみました!

9:SNSに投稿したのに誰からもいいねをもらえず自己肯定感が著しく下がっている人の絵です。

それではまた次回、どうぞよろしくお願いいたします。

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