京都でつながる本と私。vol.1 | 京都ゆかりの作家・書評家三宅香帆さんのエッセイから読む京都



KYOTO LETTER 編集部

本記事から始まる新連載、『京都でつながる本と私。』。京都出身の作家さんの本や京都を綴った本をご紹介していきます。 今回は大学、院生時代を京都で過ごした書評家・三宅香帆さんのエッセイ本をご紹介します!


本日は大学、院生時代を京都で過ごした書評家・三宅香帆さんのエッセイ本『それを読むたび思い出す』をご紹介します!

書評家の三宅さんのお仕事は、本の解説本や紹介記事を書くことです。独特に掘り下げたアプローチをして小説を読んでいく面白い試みを書評と言います。そのお仕事をされている三宅さんも、もちろん本が大好きな方です!

タイトルの『それを読むたび思い出す』は、1つの本とそこに結びついた記憶のことをさしています。あなたが京都の街を愛す毎日の中でふと思い出すものの1つに、このエッセイ『それを読むたび思い出す』があればとても嬉しく思います。

今回は本書の第2章『京都』という章を主にご紹介していきます。本と記憶との密接な関わりを楽しんでください。


本と記憶の話

『それを読むたび思い出す』のタイトルにはなかなか頷かされました。あなたにも、読んだ本とその時や場所の思い出がピタリとくっついた経験はありませんか?


「この小説を読んでいる時、あのレストランにいたなあ・・・」
「この小説を読んだのは中学生だったなあ」
「この本、そこの図書館で借りて読んだんだよね!懐かしい!」
など、数え切れないほどの思い出があるかもしれません。前後に読んだ小説を覚えていることもありますよね。

ただし、今まで読んできた本すべてと記憶が一緒になっているわけでもないのです。何か思い出のある本はきっと自分にとって大切な読書体験だったのだろうな・・・としみじみ思います。本を読んだ話も、そうでない話も盛りだくさんの『それを読むたび思い出す』。この京都もたくさん登場するエッセイは、三宅香帆さんの大切な思い出が詰まった1冊です。


京都エッセイ『それを読むたび思い出す』

3章仕立ての『それを読むたび思い出す』。その第2章はまさしく京都エッセイです。京都で学生時代を送った著者の、素敵な思い出がたくさん!新しい「京都の好き」を見つけませんか?

ここからは目次に沿って、三宅香帆さんと京都を読んでいきます。

贅沢な時間

「京都という街をスノードームみたいにしてまるっと閉じ込め、それを幾たびも撫でているのではないか。」
(出典:『それを読むたび思い出す』 86p,2行目)
「私はまだ京都に対するノスタルジーを手放すことができない。」(出典:『それを読むたび思い出す』 86p,15行目)

なんと京都愛の溢れる文章たちでしょう。この冬の時期、京都の雪景色と「スノードーム」という単語が脳内で隣合わさって、なんだか心はほこほことした気分になります。
全国から「そうだ、京都へ行こう」に誘われ多くの人が訪れる街、京都。たくさんの人が吸い寄せられる京都のなんとも言い難い魅力を、さすがの語彙で表現しておられる部分ではないでしょうか。

鴨川日記

本を読んで論文を書いて過ごした京大生、院生時代を振り返ります。駆使した頭の整理をつけるように、三宅さんは鴨川をよく歩いたそうです。

「本や論文を読んで、それを消化するためにぼーっとしたくなると、鴨川を歩いていた。」(出典:『それを読むたび思い出す』 97p, 6行目)

もしかしたら東京の学生にはできない学び方ではないでしょうか。そしてお友達とよく飲み喋った場所もまた、鴨川だそう。カップルは等間隔に座り、京大生は知識の消化をし、若者は飲んで喋る。地元の人々の生活にこんなに近い川は、日本中を探してもそう多くないのではないでしょうか。

京都とぬるい肯定感

高校生まで謙虚が絶対と思って過ごした三宅さんの何かが緩んだのが京都だそうです。三宅さんは「自分は何かをできる人間だ」という空気が漂っていた、と振り返ります。

「私にとって新鮮な風で、人生ではじめて接する、明るい自己肯定感だった。」(出典:『それを読むたび思い出す』 108p, 5行目)

院生時代の先生たちの指導にも、三宅さんは自分のゴールを見積もられていない感じがしたと言います。

「それは不思議なやさしさだった。」(出典:『それを読むたび思い出す』 110p, 15行目)
「京都でもらったのは、そんな、自分は何かを「できる」と思える肯定感だった。」(出典:『それを読むたび思い出す』 111p, 3行目)

京都が好きなあなたは、きっと何だかわかるなあという気持ちになるのではないでしょうか。はじめて京都を訪れた人や、はじめて京都の外に出た人が感じる何か。自分の街、京都にはそんなおおきな魅力があると改めて感じさせてくれることでしょう。


『それを読むたび思い出す』はこんな人にオススメ!

書評家・三宅香帆さんのエッセイ『それを読むたび思い出す』。

このエッセイ集『それを読むたび思い出す』は、本への愛と、京都への愛がぎゅっと詰まった1冊です。

読書が大好きな読者へ、小説を読む楽しさを余すことなく語ってくれます。本を「ばかすか」買うという表現は大胆かつ繊細でとても印象的です。もしかしたらあなたの読んだことのある本も、三宅さんが『それを読むたび思い出す』の中で紹介してくれているかもしれません。京都が大好きな読者へは、京都のなんとも言えない魅力を丁寧に言葉にして届けてくれます。

あなたのお気に入りのお店やスポットが登場するかもしれません。そして、新しい「本」と「京都」の好きを届けてくれるのもまた『それを読むたび思い出す』の楽しさではないでしょうか!

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